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Faculty Voice Series Episode 10. 鈴木典比古 学長 Part 3
学生のみなさんが教室で見る教員の姿、そして、本学を目指す受験生が、パンフレットや著書から知る教員の姿は、ほんの一面でしかないのかもしれません。
そこで、Faculty Voice Seriesをスタートし、本学の教員の真の姿に迫るエッセイをリレー形式でお届けすることにしました。専門分野や研究内容だけでなく、趣味、人生観、若き日の想い出など、様々な角度から語られるそれぞれの教員の人柄に、ぜひ触れてみてください。Episode 10.は、鈴木 典比古(すずき のりひこ)学長です。
Click here for the English version of the message from AIU’s president Norihiko SUZUKI.
鈴木典比古学長は、米国の大学で博士号を取得したのち、1978年より国内外の大学で教鞭を執り、2013年6月、本学の理事長?学長に就任しました。また、中央教育審議会大学分科会委員などを歴任しています。
「若き日の葛藤」というテーマで、3エピソードに渡ってお届けしています。
これまでの記事は、こちらからご覧いただけます。
アメリカ大学バスケットボールの興奮する思い出-1975-76年インディアナ大学-
もう40年以上も前のことだが、私はアメリカのインディアナ大学、ワシントン州立大学、イリノイ大学の3つの大学で経営学を13年間教えた。これらの大学はスポーツが非常に盛んな大学であった。アメリカの大学のスポーツ選手はスターであり、大学を代表する。
そんなスポーツ選手が時々、私の授業をとることがあった。スポーツ選手だから勉学のほうは疎かにしているのではないかと思われがちだが、そうではない。スポーツ選手の学業成績は全米で7つある地区の大学スポーツ協会(Regional Conference)に定期的に報告されていて、協会が定めた一定の成績(Grade Point Average=GPA)以上を取っていなければならない。
アメリカの大学の成績はA=4点、B=3点、C=2点、D=1点という風にアルファベットと数値の両方で付けられる。大体GPAがB(3点)以上だとアメリカの大学のどこへ行っても成績優秀と認められる。スポーツ選手の場合、GPAが2.25点(つまりBとCの間)を下回ると、次の公式戦から出場できなくなる。したがって、監督やコーチ陣は選手の体調や試合そのものに気を配ると同時に、選手の学業にも気を配らなければならない。
中間試験などで悪い成績をとると監督やコーチが飛んできて、なぜ成績が悪いのか、勉強改善の方法はどうすればいいかなどを聞いていく。選手の生活指導にも目を配っていて選手の食事なども3食きちんととるようにと厳命である。
ある時、インディアナ大学の2人のバスケットボール選手が私のクラスを履修することになった。センターのケント?ベンソン(Kent Benson)とフォワードのアイザヤ?トーマス(Isiah Thomas)である。二人とも大学卒業後はプロバスケット選手への道を選んだ。このころ(1975~76)はインディアナ大学バスケットボールの全盛期で、当時の監督は全米でも名高かったボブ?ナイト(Bob Knight)であった。とにかくインディアナ大学が参加する中西部コンファレンス(Midwestern Conference)で31勝ゼロ敗を2年間続けたのだ。
1試合ごとに勝ち進み2連覇が近づくと、広大なインディアナ大学のブルーミントンキャンパスは徐々に異様な雰囲気に包まれ始めた。私のクラスにもそれが伝わってきて、ベンソンやトーマスがクラスに出席すると拍手がわくほどであった。とりわけベンソンの身長は7フィート(2メートル10センチ)もあり成績も優秀だった。
競技と学業、両「コート」での選手たちの活躍が本人たちの努力によるものだということは言わずもがなだが、ここで強調したいのは、コーチや教員といった、学生周囲にいる「大人」たちも含めて学生本人の文武両道を支える環境的な土台が整っているという点である。
翻って、この国際教養大学。本学はインディアナ大学ほどの規模はないものの、学生の一体感という意味では負けていない。コロナ禍という未曾有の困難に直面しながら、一度もキャンパスで顔を合わせることなくオンライン開催し成功裏に終わった2020年の大学祭「AIU Festival」は見事だった。そして、そんなAIU生たちは暇かというと、決してそうではない。グローバルリーダーの育成を掲げる本学では、学生への課題が質?量の両面で世界標準であることを教員に求めているし、学生たちも見事にそれに応え、巣立っていく。
とはいえ、大学での学びは教室内のものだけではない。インディアナ大学の「バスケ」は、本学では多様な課外活動として学生によって様々な形を取る。すべてに全力投球して最高の結果を出せれば当人も納得だろうが、往々にしてそのように上手くはいかない。インディアナ大学の監督やコーチが学生たちの学業にも気を配っていたように、本学では学生一人ひとりに割り当てられるアカデミック?アドバイザー(いわば指導教員)を始めとした教職員だれしもが、成績だけでない、学生の人間的な成長を支えたいと思ってここにいる。学業に限らず、迷ったときにまずは周りの人に相談してみてほしい。
かくして、「若き日の葛藤」として書いたこのシリーズは、次世代を担う学生たち誰もが直面するであろう葛藤に寄り添って、筆を置きたいと思う。
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