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AIU?秋田県内企業連携プロジェクト(1):「EKIBEN ToriMéshi Bento」プロジェクトがCJPF2023準グランプリを受賞
日本各地の鉄道駅で親しまれる駅弁。その駅弁文化を世界に発信する活動として、秋田県JR大館駅の名物駅弁「鶏めし弁当」の株式会社 花善が2021年11月から2022年5月までの6カ月間、フランス?パリのリヨン駅構内で駅弁を販売するポップアップストア「EKIBEN ToriMéshi Bento」を出店しました。秋田県の小中高校生に加え、本学学生も参加したこのプロジェクトが、このたび「クールジャパン官民連携プラットフォーム(以下、CJPF)」のCJPFアワード2023プロジェクト部門準グランプリを受賞しました。
このプロジェクトには、本学学生の秋山 真輝さん(2018年入学)、丹羽 果颯さん、櫻井 航汰さん、山口 志帆さん(2019年入学)、仲田 大樹さん(2020年入学)の5名が参加しました。プロジェクトに参加した仲田さんと株式会社 花善の八木橋 秀一社長に、秋田だからこそ実現できた企業と学生の協働について聞きました。
(聞き手:AIU広報チーム)
「駅弁」はフランスで通用するか
AIU:まず、花善駅弁のフランス進出について、きっかけと背景を聞かせてください。
八木橋:フランス進出のきっかけは2018年の10月から11月にかけて、日仏友好160周年の記念事業として全国の駅弁5社が連盟しパリ市内リヨン駅に期間限定店舗を特設して駅弁を販売したことです。花善としては、特設店舗を開く前からフランス進出を検討していました。特設店舗の運営を経て、ビジネスとしても可能性があると判断して2018年11月にフランス現地法人を設立し、2019年にはパリに常設店舗を開きました。
2018年の春からフランス現地に駐在員をおいて調査等を進めていましたが、その駐在員が実は大学生だったんです。大館生まれで北海道の大学に進学し経営を学ぶ学生でしたが、実学を学びたいということで大学を2年間休学して花善に来てくれました。現地法人の立ち上げは、学生にも大きな経験になると思い駐在員として派遣しましたが、やはり大学生は頭が柔らかく私にとってもいい気づきがありました。
AIU:AIUの学生たちがプロジェクトに加わったきっかけは何ですか?
八木橋:最初は花善のフランス現地法人とフランスにいるAIUの学生とで何か協業ができないかと思い、2020年にAIUへコンタクトしたのがきっかけです。AIUの学生にとっても「留学した」で終わるのではなく、実務的な経験をすることでメリットがあり、花善としても力強いWin-Winの関係になるのではないかと思っていました。
ただ、当時はコロナが流行しはじめ、AIUのキャンパスには学生が一人もいない状況でした。さらに「駅弁がフランスで通用するのか」という厳しい意見もありました。そういったなかで、中川 秀幸 准教授がプロジェクトの後押しをしてくださり、2021年からプロジェクトが本格的に動きはじめました。先生方の協力のもと、パリ?リヨン駅で駅弁のポップアップストアを開くプロジェクトに関わりたいAIU生を募集したところ、仲田さんを含め5名の学生が手をあげてくれました。しかし、コロナ禍でみなさんそれぞれ別々の場所にいて、秋田に住んでいない状況でした。当然、秋田のこともよく分からない状況だったので、最初は足並みを揃えることが大変でした。
仲田:私は高校1年生のときにフランスに留学した経験があります。偶然ですが、花善のポップアップ店舗のキッチンがあるところから自転車で10分程度の距離に住んでいたことに加え、フランス現地の生活もある程度分かっていました。中川准教授とフランス語の阿部 邦子 特任教授からお誘いをいただき、メンバーとして参加することになりました。プロジェクトメンバーに参加した当時、私はコロナの影響で大学1年次末の2021年1月に秋田に入ったばかり、そのほかのメンバー4人は秋田にいない状況でした。
正直なところ、花善のように地域に支えられ地域に密着して長年続けられてきたビジネスに、秋田について何も知らない「よそ者」のような私が関わっていいのか、という不安がありました。ただ、逆に「もっと秋田のことを知ろう」と思うきっかけになったと思います。自分なりの視点でなぜ「秋田で」、なぜ「よそ者、若者、バカ者」がプロジェクトに関わって地域を一緒に盛り上げていく必要性があるのかについて、答えを探しながら活動しました。もちろん、八木橋社長からは「何も分かっていない」というのではなく、社長から学生に「これどう思う?」と声をかけて学生の意見を尊重してくださり、学業に支障がないように配慮してくださったりしたので、八木橋社長がいたからこそプロジェクトが成り立ったと思います。
「秋田だからできない」を変える
八木橋:花善が地元大館の小中学校の給食に「鶏めし」を提供して今年で11年目になります。「鶏めし」の給食提供に加えて、私は学校に赴いて小学校1年生から中学3年生までの学生たちと話す活動を続けています。現在、大館市には小中学生が4,500名ほどいて、その学生たちと長年顔を合わせてきました。給食提供が始まって7年目か8年目の頃だったと思います。学生たちのなかに「秋田だからできない」という考えが根強くあることを感じたんです。高校を卒業したら「東京、大阪、仙台に行きたい」と思っていて「都会に行けばなんとかなる」という考え方になってしまっていました。そこで私は「秋田から発信することによって、秋田の強みが活かせるんだ」ということをやりたかった。
ただ、そこに私がいると「花善だからできた」ということになってしまうので、小学校、中学校、高校、大学の全ての世代を巻き込み、皆でプロジェクトに関わる形にしました。小学生チームは5年生の80名ほどで、店舗で弁当を購入したお客さんに配るプレゼントを作りました。中学生チームは駅弁用のお茶を開発するプロジェクトを、高校生チームはフランス人に伝わるように弁当のお品書きの構成に取り組みました。
AIUの学生たちにはものをつくるというより、問題解決に取り組んでもらいました。そのときの一番のヒット作が『Province d’Akita Bento』です。
仲田:『Province d’Akita Bento』は直訳すると「田舎から来た秋田のお弁当」という意味です。ポップアップストアをつくるにあたって「東京」や「大阪」、「京都」と差別化した「秋田」を簡潔に伝えつつ、秋田のプロモーションにつながるものを模索した末に出た案が、いぶりがっこや稲庭うどんなど秋田名物がつまった「秋田弁当」を販売することでした。ただ、単純に「秋田弁当」と言っても売れないので、どうすれば「秋田」というものを全面的に出して現地の目を引くか、どうすれば売れるかという問題について、社長と毎週いろいろなテーマを持ちながら議論しました。そのなかで「秋田弁当」のフランス語ネーミングを考えるタスクがありました。学生たちで知恵を絞りながら出した「Province」という言葉は「田舎の、風情のある」などのニュアンスの単語ですが、それがあることによって「日本だけど、東京、大阪とは何が違うんだ」というちょっとした疑問を持たせるような、ある意味キャッチーでフランスの人たちに響くような名前に結果的になったのかなと思います。
八木橋:『Province d’Akita Bento』はそこまで売れるとは思わなかったんですよ。販売していたお弁当の中で一番値段も高かったので。ただ、ネーミングで売れました。「どこにでもあるものではない、ここにしかない」という付加価値に、お客さんが気づいてくれました。
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