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AIU?秋田県内企業連携プロジェクト(2)秋田物産を世界最大規模の食品見本市「SIAL Paris」へ出展
秋田県と国際教養大学、県内企業との連携で秋田県産品をヨーロッパ市場へ紹介するプロジェクトに本学学生5名が参加しました。
2022年4月から始まったこのプロジェクトには、稲庭うどんを製造販売する株式会社 稲庭うどん小川と、いぶりがっこを製造販売する有限会社 まこと農産が参加し、フランス?パリで開かれる世界最大規模の食品見本市「SIAL Paris 2022」にブース出展を行いました。本学からは小堀 翔暉さん(2019年入学)、仲田 大樹さん、山本 啓介さん(2020年入学)、山崎 万由佳さん、梅村 美香さん(2021年入学)の5名が参加しました。学生メンバーは2022年4月から6カ月間、各企業のマーケティングコンセプトを練り上げるとともにフランスで現地調査を行い「SIAL Paris 2022」出展企業をサポートしました。
プロジェクトに参加した梅村さんと、稲庭うどん小川の小川 博和社長、小川 選子専務、まこと農産の佐藤 樹(いつき)代表、佐藤 ななえさんに、秋田県産品をヨーロッパに紹介した今回のプロジェクトについて聞きました。
(聞き手:AIU広報チーム)
広報チーム(以下、AIU):まず、AIUとの協働プロジェクトが始まったきっかけを教えてください。
稲庭うどん小川:私たちは秋田県湯沢を拠点として稲庭うどんの製造販売を行っています。20年以上前から海外販路はありましたが、主に北米とアジアでした。ヨーロッパ圏での販路開拓を検討していたところ、秋田県の事業として学生と協働し県産品をSIAL Parisに出展する企画があることを知り、2022年4月にプロジェクトに参加しました。
まこと農産:まこと農産はAIUのキャンパスからほど近い秋田市雄和にあり、いぶりがっこを製造販売しています。一般的にいぶりがっこは米ぬかを使用して漬け床を作りますが、私たちはビールで漬け込む「燻り麦酒(ビール)漬け」の製造?販売を一貫して行っています。秋田県内でいぶりがっこを製造販売する会社は数多くありますが、我々は大手に比べて規模が小さく、さらには観光関連の企業との取り引きが多かったため、コロナの影響で客足が減り打撃が大きかったのです。そういった背景から、海外販路の開拓を検討していたところSIAL Parisへの出展事業を知り参加しました。海外のバイヤーと顔を合わせて商談したのは今回の「SIAL Paris 2022」が初めてでした。
AIU:梅村さんはどのようなきっかけで参加しましたか。
梅村:きっかけは「EKIBEN ToriMéshi Bento」プロジェクトに参加していた仲田さんからの紹介でした。仲田さんは前年に引き続き、今回の企業連携プロジェクトでも一緒に活動するメンバーを集めていて、私がAIU祭の執行委員をやっていたこともあり、最初は誰かを紹介してほしいというお願いだったのですが、話を聞くととても面白そうだったので「自分で引き受けます!」となって(笑)。
以前から「せっかく秋田にいるから、東京の大学生にはできない経験をしたい」と思っていました。秋田県の農家や地元企業と協働しプロジェクトに参加するAIUの同期たちを見て、自分もそういう経験ができればと思っていたところ、仲田さんからの誘いがあり、良いチャンスだと思いました。
AIU:「EKIBEN ToriMéshi Bento」プロジェクトで企画し秋田県産品を詰めた『秋田弁当』にも、稲庭うどん小川さんのうどんと、まこと農産さんのいぶりがっこが使われました。
稲庭うどん小川:そうですね。現地での様子は私も動画で見ました。フランス現地の人たちが「おいしい」と言いながら『秋田弁当』を食べている姿は新鮮でした。その後、実際に販売された『秋田弁当』を食べる機会もありました。味付けなど、たくさん工夫されていることが分かりました。
まこと農産:私たちが作ったいぶりがっこは『秋田弁当』ではソースとして使われましたが、いぶりがっこのくせがいい意味で残っていてよかったです。ヨーロッパにも燻製文化があるので、いぶりがっこも受け入れられそうだなという感覚もありました。
食文化と言葉の違いが戦略の糸口に
AIU:学生チームと企業との協働活動はどう進めましたか。
梅村:私を含めて5名の学生が集まり、3名がまこと農産さんの担当、2名が稲庭うどん小川さんの担当に分かれて活動しました。SIAL Parisの開催に向けて学生チームは、現地のマーケットで秋田県産品をどう紹介するか、どうアピールしていくかのコンセプトを練り、フランス語パンフレットの企画?制作を行いました。
私はまこと農産さんの担当チームでしたが、「いぶりがっこ」の認知度がヨーロッパ圏ではまだ低いということもあり、どのようなネーミングで何を伝えるか、まずは戦略を考える必要がありました。
一般的にフランス語で大根は「Radis」と訳され、品種の違いはありますがどちらかというとラディッシュ、日本のカブに近いイメージです。ただ、フランス食文化の文脈からどの言葉が効果的かを考えたとき、ここではあえて「Daikon」という単語を使うことで「日本食らしさ」が伝えられると思いました。
AIU:最終的に「いぶりがっこ」はどんな言葉に訳しましたか。
梅村:『Daikon Fumé』という名前になりました。直訳すると「いぶされた大根」という意味です。SIAL Parisにはもともと日本食への興味や知識がある方も多く参加するので、そういったターゲットに合わせたネーミングにしました。
まこと農産:いぶりがっこは、日本の地理的表示制度(GI : Geographical Indication)を取得しているので行政としては「いぶりがっこ」というネーミングを残してほしかったのかもしれません。ただ我々としては「いぶりがっこ」という固有名詞へのこだわりはなく、ヨーロッパの人たちにいぶりがっこというものを一言で説明できる言葉は何かが、より重要でした。そういう意味で『Daikon Fumé』はすばらしいネーミングでした。結果的に海外のバイヤーにパンフレットを見せたとき、ネーミングと写真でいぶりがっこが直感的に伝わり、興味を持ってもらうきっかけになりました。
広がるヴィーガン食の流れに応える
AIU:異なる食文化圏へ商品を紹介するため、様々な工夫があったと思います。
稲庭うどん小川:稲庭うどんの良さを、どんな切り口で伝えるかというところは悩ましかったです。やはり日本人の感性や感じ方と、現地での受け止め方には違いがあり、それらを意識しつつ学生チームと何度も打ち合わせをしました。パンフレットの構成やキャッチコピーなども路線変更を重ね、最終的にはいろいろなレシピとその写真を載せることで、言葉よりも視覚的に伝えることにしました。印刷媒体の特性を活かして端的に伝えることを狙いました。
稲庭うどん小川:もう一つの切り口は、ヴィーガン食への対応です。
AIU:ヴィーガン食への対応?
稲庭うどん小川:実は2021年4月から動物性食品を原料とする加工食品をヨーロッパ圏へ輸出する際に厳しい規制がかかるようになりました。市場も混乱したと思います。稲庭うどんのめんつゆは比内地鶏を原料とするため、そのままでは日本から輸出ができなくなりました。さらに、ヨーロッパ圏でヴィーガン食は非常に浸透していて学校の給食でも週に1度はヴィーガンの献立で食事が提供されます。市場としても今後期待できると判断し「ヴィーガンつゆ」の開発を進めました。
AIU:製造工程もガラッと変わると思いますが。
稲庭うどん小川:ヴィーガンつゆの製造は私たちも初めての試みでした。ただ、作り方は非常にシンプルです。昆布と椎茸を細かく裁断したものでだし汁を取って、調味料を入れるという工程で、家庭での作り方と変わりません。しかし、味の調整には何度も試作を重ねました。AIUの留学生を含めいろんな学生を対象に試食会を開きフィードバックをもらいました。
梅村:2022年からは交換留学生の受け入れも再開し、キャンパスにはフランスからの留学生たちも来ていました。その留学生たちにも声をかけて開いた試食会で、茹でたてのうどんとヴィーガンつゆを用意して試食してもらいました。単純にヴィーガンつゆについて、「おいしい、おいしくない」というYes?Noの答えだけではなく、どの食べ合わせや食べ方がよかったのか、留学生だけではなく日本人としてはどう評価するかといった、より総合的なフィードバックをもらえるように心がけました。
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