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私のオススメ授業紹介:日本国憲法と法(井上 晃利さん)

国際教養大学(AIU)の際立った特長の一つが「すべての授業を英語で開講していること」です。ただし、本学は「英語を学ぶ大学」ではありません。「英語で学び、英語で考える大学」です。

また、本学は一貫して少人数教育を徹底しています。教員と学生のコミュニケーションの機会を増やすことにより、自ら考え、意見を主張できる能力を磨いてもらうことを目的としています。

この「私のオススメ授業紹介」では、学生自身が「おもしろかった!」「ためになった!」「ぜひ受験生のみなさんにも学んでほしい!」と思った授業を、学生自身の言葉で紹介する企画です。

今回は井上 晃利(いのうえ あきとし)さんのオススメ授業をご紹介します。

井上 晃利さんの写真
井上 晃利さん

皆さん、こんにちは。井上 晃利です。今回紹介するオススメ授業は「日本国憲法と法」です!

科目情報

  • JAS225 日本国憲法と法
  • 教員:豊田 哲也 教授
  • 単位数:3単位

履修のきっかけ

AIUでは教養基盤科目として、日本の政治、経済、文化、歴史などを扱う様々な科目からなる「日本研究」の中から科目を選択し、単位を取得することが必須となっています。この授業はその「日本研究」科目の中の一つです。授業を通して、法律や歴史的な観点から現在の日本という国を改めて見つめ直すことができたこと、また興味のある分野を法的な側面から考える機会になったことは、とても有意義であり興味深い授業だったので紹介したいと思います。

日本国憲法の成り立ちと今

まず、この授業では日本という国家の成立を法律や歴史的背景から学びます。日本国憲法は、第二次世界大戦後の占領期に制定されたものであり、日本の歴史的な転換点を象徴しています。憲法の制定の過程を学ぶことで、日本の戦後史や政治の変遷を理解することができ、その歴史的背景からは、日本国憲法が民主主義の原則を基礎とし、個人の権利と自由を保護していることがわかります。さらに、外交的観点で日本国憲法の成り立ちを知ることで、戦後日本がいかに他国との関わりの中で憲法を制定したのかを理解することができました。

日本は民主主義の精神と原則を大切にし、それを法律という形で現在に継承していますが、一方で、法律によっては社会の変容に法改正が追いつかず、実社会と法律の乖離がある事実もより強く認識しました。しかし、日本国憲法には一部条文に「曖昧さ」が設けられていて、その「曖昧さ」が社会や政治の変化に応じた柔軟な対応を可能とする、憲法解釈の論点となっていることを、憲法成立の歴史的背景を読み解くことで理解することができました。

民法における当事者適格

授業で扱うもう一つのトピックは興味のある法関連のテーマについて考察し、プレゼンテーションをする課題です。私は環境問題に興味があったため、環境問題と法の関連性を調べることにしました。事例を調べていく中で「沖縄における開発と環境問題」という議題に対して、「なぜ日本の社会的共通資源に関する議論なのに、沖縄以外の人が訴訟を起こすことができないのだろう」という素朴な疑問が浮かびました。それは民法における「当事者適格」(ラテン語ではLocus Standi)が関係していることが分かりました。ラテン語を直訳すると、「立っている場所、立場」という意味で、法律用語としては「当事者適格」を意味します。個人や組織が訴訟を提起するためには、訴訟によって保護されるべき法益を有する者である必要があり、この要件を満たさない人はそもそもその事柄において訴訟を起こすことができないのです。そして、その要件の線引きは国?法律によって異なっていて、その違いを他国と比較することで日本の法律の性質を理解する良いきっかけになるのではないかと考えました。

「当事者適格」に関連する面白い事例として、アメリカでは自然物にも当事者能力を認めるべきであるとする学説もあり、1979年にはハワイに自生するパリラ鳥を原告とした訴訟が行われたことを知りました。このように自主的に興味のあるトピックから法を読み解き、それを国際的に比べることで、知見を広げながら日本国憲法への理解が深めることができます。

法律は、国や社会の基本的なルールブックであり、我々の生活や権利に深く関わるものであるため、この授業はさまざまな分野の人にオススメしたい授業だと思いました。

豊田 哲也先生からのメッセージ

日本語で書かれているものなのにどうして日本の憲法について英語で学び、英語で議論するのか、最初は不思議に思うかも知れません。しかし、明治憲法と現行憲法は世界の立憲主義(constitutionalism)の歴史の中で重要な役割を果たしており、国際的な文脈の中に位置付けてこそ、興味深いトピックを提供してくれます。学生の皆さんには、立憲主義と法の支配について英語で学び、その過去と現在と未来について、英語で語れるようになってもらえればと思います。