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椙本歩美准教授がAIU Human Library 2025を開催しました

本学の椙本歩美准教授が、ワークショップ「AIU Human Library 2025」を開催しました。秋学期に開催した第4回?第8回ヒューマンライブラリーの報告と主催した椙本准教授、参加した学生の阿部小雪さんの感想をご紹介します。

第4回テーマ:「子どもたちの戦争体験」

9月20日(土)の第4回は、「子どもたちの戦争体験」というテーマで、秋田市で語り部として活動されている伊藤薫さんと鎌田弘さんがご自身の戦争体験について語りました。当時、小学生だったお二人が語る日常生活や学校教育は、今とは異なる「当たり前」ばかりでした。戦死されたお父様やご親戚の方々の遺品など、戦争にまつわる物も展示され、対話の時間には、学生からさまざまな質問や感想が寄せられました。世代を超えて、ともに戦争と平和について考える機会となりました。参加した学生9名からは「80年以上前の子どもたちの人生に大きな影響を与えた戦争が、当時の子どもの目にどう映っていたのか、少し知ることができたように思う」「実物を初めて見て、触れることができて、事物から感じた感情を大切にしていきたい」「悲惨さや恐怖は言葉にならないものがあり、伝え切る難しさを知ることができて、私にとっての大きな気づきだった」などの感想が寄せられました。

第4回AIU Human Library 2025の様子
①
戦争体験に静かに耳を傾ける参加者
第4回AIU Human Library 2025の様子
②

第5回テーマ:「『生きづらさ』を語ろう」

10月4日(土)の第5回は、「『生きづらさ』を語ろう」をテーマに学生3名が自身の経験談や感情などを語り合いました。このテーマは、春学期の第3回「若者の生きづらさと犯罪」に参加した本学学部生の萩平乃愛さんから「学生自身が当事者として生きづらさを語り合う場が欲しい」と声をあげたことで実現しました。学生3名は体験談を語り合った後「生きづらさ仕分け」というワークショップを行い、普段なかなか言葉にできないさまざまな生きづらさを言語化、分類し、可視化しました。参加した学生からは「生きづらいと思っている人が他にもいることが分かると少し楽になれると思った」「過去や自分と向き合う人たちがいると思って、少し安心した気がする」などの感想が寄せられました。

第6回テーマ:「My Book Life Story?本好き集まれ?」

10月25日(土)の第6回は、「My Book Life Story~本好き集まれ!~」をテーマに、本学図書館司書の相場洋子さんが、司書となった人生と本との出会いについて語りました。また後半は、参加した学生8名が2グループに分かれて、自分にとって大切な一冊を紹介し合い、それぞれの人生に影響を与えた本と、それにまつわる思い出を分かち合いました。参加した学生からは「本について他の人と共有することが今までなかったので、本の選び方や読み方、感性を通してその人の価値観や本質を知ることができた気がして、まさに『My Book Life Story』というテーマにぴったりな体験ができたと思った」などの感想が寄せられました。

第6回AIU Human Library 2025の様子①
本学図書館司書の相場洋子さんから人生と本との出会いについて語られました。
第6回AIU Human Library 2025の様子②
人生に影響を与えた本とそれにまつわる思い出を分かち合いました。
第6回AIU Human Library 2025の様子③
一人ずつ大切な一冊を紹介し、グループで対話をしました。
第6回AIU Human Library 2025の様子④
お互いの本の選び方や読み方、感性を通してその人の価値観や本質を知ることができました。

第7回テーマ「色で心をほぐすアート体験~パステルアート×ヒューマンライブラリー」

11月8日(土)の第7回は、「色で心をほぐすアート体験」と題して、秋田市で活動しているパステル和アート「ころ」のメンバー4名をファシリテーターにお招きして、本学学生6名、秋田大学学生2名、雄和にある押し花サークルの方々7名が参加しました。パステルの色を指で広げながら心のままに描くパステルアートの今回のモチーフは「花瓶の花」で、それぞれの個性が光る作品が出来上がり、最後に自分の作品を紹介しました。作品を通して自分の心と対話し、他者に作品を紹介する体験は、参加者にとって自分の気持ちと向き合う機会となりました。また学生と地元住民の世代を超えた交流の輪も広がりました。参加者からは、「自分の気持ちやコンセプトをリフレクトしたり、友だちや押し花サークルの方々のコンセプトを聞くのも大変楽しかった」「自由に描くという行為は人間らしい営みの一つなのかなと思った」「かなり気持ちが自由になれたので、もう少し自分の表現に自信を持ってもいいのかもしれないと思った」などの感想が寄せられました。

第7回AIU Human Library 2025の様子①
ファシリテーターとしてパステル和アート「ころ」のメンバー4名をお招きしました。
第7回AIU Human Library 2025の様子②
作品を紹介することで自分の気持ちと向き合うことができました。
第7回AIU Human Library 2025の様子③
作品を通して学生と地元住民の交流の輪が広がりました。
第7回AIU Human Library 2025の様子④
「花瓶の花」でそれぞれの個性が光る作品が出来上がりました。

第8回テーマ「19歳の介護職員~介護ってなあに~」

11月15日の第8回は、「19歳の介護職員~介護ってなあに~」というテーマで、介護職員の湊早紀さんをお招きし、お話していただきました。大学にいると、なかなか接することがない介護の現場ですが、人間の尊厳に関わる大切な仕事です。湊さんから介護という仕事を選んだ理由や実際の仕事の様子、そして介護にかける思いや将来の夢などについて、学生からの質問に答える形で、率直かつ丁寧に語られました。参加した学生は2名と少なかったのですが、とても熱心に耳を傾けていました。学生からは「自分が持つ介護の認識と、実際に現場を経験されている方々のお話には大きな差があり、実態を知ろうとすることの重要性を改めて感じた。同世代で責任を持ち、人のために働かれている姿に感動した」「在宅介護を受けていた祖父の良い記憶も大変だった記憶も思い出すことができて嬉しかった。なぜ、感謝され、尊敬されるべき人に光が当たらないのか、自分に何ができるのか考えながら生きようと思えたとても良い機会だった」などの感想が寄せられました。

第8回AIU Human Library 2025の様子
介護にかける思い、将来の夢など学生からの質問に率直かつ丁寧に語られました。

阿部小雪さんの感想

私がHuman Libraryに行くきっかけとなったのはポスターでした。「生きづらさ」という言葉に惹かれて参加を決めました。 最初は、課外活動に参加したのが初めてだったこともあり、どれくらい頑張ればいいのかと身構えていた記憶があります。しかし、日本語のディスカッションは新鮮で、本音を話しやすい感覚がありました。また、参加者の相手を尊重する姿勢、無理に結論を出そうとせず聞いてくれる雰囲気がさらに話しやすさを高めてくれました。特に「生きづらさ」を語る会では、各々の経験やそれに基づいた考え方を共有する過程で多くの学びがあり、種類は違えど、どこか似たような悩みを抱える人との出会いがあり、私にとって価値のある会でした。本の魅力を語る会では、読みたい本が増え、読書の楽しみをさらに広げることができました。また、紹介者がその本をどういった時に読んだのか、どこが好きなのかを知ることで、さまざまな人生の紆余曲折に思いを馳せ、充実した時間を過ごすことができました。

この秋学期は、留学を控え考えすぎて疲れたり、環境の変化に適応するのに苦労しました。だからこそ、ここでの出会いは私の心を温かく癒してくれました。普段は交わることのない人と出会えたこと、共通の悩みを抱える人に出会えたことが私の日々の考え方を前向きにしてくれました。この素晴らしい交流の場がこれからも続いていくことを願ってます。

(参加した活動:第5回「「生きづらさ」を語ろう」、第6回「My Book Life Story」、第7回テーマ「色で心をほぐすアート体験」)

椙本准教授からのメッセージ

秋学期は、本来のヒューマンライブラリーにアレンジを加えながら、多様なかたちで「対話の場」をつくりました。例えば、第5回「『生きづらさ』を語ろう」では、春学期に参加した学生が語り手となり、学生同士で自身の経験を共有する機会になりました。聞き手だった人が語り手へと変わり、対話の輪が広がっていくことも、ヒューマンライブラリーの大きな可能性だと感じています。また、第6回「My Book Life Story」や第7回「色で心をほぐすアート体験」では、本の紹介やアートワークを通じて、参加者が自分と向き合い、自分の気持ちを表現する「自己対話」の場を生み出しました。第4回「子どもたちの戦争体験」では世代を超えた対話が、第8回「19歳の介護職員」では同世代同士の出会いと語り合いが実現しました。このように、誰もが当事者として語ることができ、その声を互いに聞くことで、尊重や共感が育まれる場をつくることができます。今後も、年齢?出身?所属などに関わらず、多様な人びとが出会い、語り合える場を広げ、大学をより人間的に成長できる豊かな環境にしていきたいと考えています。ご参加くださった学内外の皆さまに、心より感謝申し上げます。