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研究

本学教員が執筆した論文「負の記憶の“聞き手”を考える-戦争記憶を聞いた経験の内省的考察-」が出版されました:椙本歩美准教授

本学Global Studies領域の椙本歩美准教授が執筆した論文が『環境社会学研究』に掲載されました。

論文要旨

戦争記憶の継承は、語り手と聞き手にとってさまざまな困難さを持つ。語り手は、その体験を他者に容易く語ることができないだろうし、同じ体験をしていない聞き手にとっては、想像を超えるような記憶に戸惑いを持つかもしれない。この語り手と聞き手の間にある非共有性や非対称性は、次世代の聞き手にとって記憶の受け止めがたさにつながり、継承における世代間の断絶を生むこともある。記憶はまた、集合的なものであり、時代ごとに再構成されていくのだが、その過程では、記憶する集団にとって正統なもの以外は周縁化される。つまり記憶の継承には、聞き手の受容のあり方が、深く関わっているのだ。そこで本稿では、負の記憶の聞き手たちが、戦争の記憶をどのように受け止めたのか、または受け止めなかったのかについて理解を深めたい。事例として、筆者自身の戦争記憶を聞く経験を内省的に振り返り、聞き手の受け止めが、いかに可変的で多元的かを明らかにする。そのうえで、記憶を継承する困難さを抱えながらも、記憶とともに人と人がつながりつづけるために、聞き手はどうしたらよいのかを考察する。

キーワード:戦争記憶、聞き手、可変性、多元性、負の記憶の総体

論文詳細

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